先日、会社のスタッフと黒澤明の「赤ひげ」を見に行きました。
理由は、単純に私が見たかったから、
もう一つの理由は、私の好きな監督の映画をぜひスタッフに見て欲しかったから。
このブログを読んでいる方でも、
劇場で黒澤明の映画を見たことがある方はほとんどいらっしゃらないでしょう。
と言っても、私も「赤ひげ」を見たのは多分20年以上も前。
よく覚えておらず、とにかく良かった、という記憶しかありません。
本当に社員に見せて役に立つのか、不安でした。
しかし、そんな不安は全く必要無かったのです。
当然ながら、とても素晴らしい内容です。
今回の気づきは、それだけはありませんでした。
なぜ、私が黒澤明の映画を好きなのか、
私にとって他の映画と格別なのか、その理由がわかったのです。
黒澤明の映画に出てくる役が、とにかくカッコ良いのです。
それは、容姿が良いということではありません。
見た目は悪い役者もたくさん出てきます。
それでも、その役の人たちがかっこいいのは、
それぞれの「生き様」
がしっかりと描かれて居るのです。
そんな黒澤明の映画に出てくる人たちに、憧れ、
あのように生きてみたい、そう感じていたのです。
今回の「赤ひげ」もまさにそうでした。
ストーリーを簡単に説明しますと、、、
「赤ひげ」(医者・三船敏郎)は、貧しい人たちを受け持つ診療所で
様々な人の病気を見ていました。
そこに、加山雄三(役の名は保本登)が演じる医者が無理やり送られてきます。
この医者は、若くて優秀で、長崎で最新の医療を学んだという自負があります。
それなのに、なぜこんなに貧しくて臭い人たちを見なくてはいけないのか、
強い反感を持つのです。
しかし「赤ひげ」の元で嫌々ながらも仕事をしていくうちに、
「医者とは病気を治そうとするだけではダメなんだ、
もっと、見なくてはいけないことがある。」
と言うことに気がついていきます。
弱者を救い、
人のためであれば、悪いとわかっている事でもしてしまう、
知識を増やすための努力を怠らず、役に立てようと研究する、
お金には執着せず、贅沢はしない、
戦えば10人ぐらいを相手にして、簡単にのしてしまう。
そんな人が「赤ひげ」だ。
今回、この「医者とは病気を治そうとするだけではダメなんだ」と言う事は、
家づくりでも同じだと気がつかされました。
家づくりをするには、家のことだけを考えれば良いわけではありません。
ただ安くするためのコストダウン、無理やりの借り入れ、かっこいいだけのデザイン。
そんな事ではご家族を不幸にしてしまいます。
本当に良い家づくりとは、
しっかりと家族と向き合い、そこからお話をさせて頂くことが大切なのです。
そんな事が「赤ひげ」に濃密に描かれていました。
「赤ひげ」は私が目指そうとしている一人だったのです。
私は、今まで見てきた映画から多くの影響を受けてきたと感じてきました。
それを実感できたこの映画、とても嬉しくも、誇らしくも思いました。
黒澤明の本は、今でも新書が出ます。
下の写真は、最近出た本です。
本棚を数えたら、黒澤明の本だけでも90冊もありました。
家づくりの技術的なことは、
時間をかければ学ぶことができると思います。
ですが、お客様とどのように向き合っていくのかという事は、
頭ではわかっても、体ではわからない、会得できない事です。
どんなに時間をかけても。
「いい家をつくるんだから最高だろう、」
と言うのはダメなのです。
家づくりで本当に大切な事は、何なのか、
当社のスタッフは学んで、感じてくれた事でしょう。